今回は落合尚之氏作の漫画、罪と罰 A Falsified Romanceを紹介します。
作家志望の裁弥勒は独り立ちの為に上京するも引きこもり、
自分だけの狭い世界で自尊心を膨れ上がらせていた。
そんな中、ある売春組織の存在を知り
組織のリーダーであるヒカルへの取材を敢行した弥勒はある計画を企てる。
その計画とは、
「全てに害を与える存在を駆逐する事は選ばれた者にしか行えない正当化される行為」
という意志の元行われる計画、即ちヒカルを殺す事だった。
周りに害をなす人を殺す事は誰にも咎められる事ではない、
正当化される行為と信じる弥勒。
弥勒はその計画を実行するのか?
そしてその計画に行き着いてしまった弥勒の過去に何があったのか・・・?
罪と罰という作品やテーマはよく見かけると思いますが、
本作は元となったフョードル・ドストエフスキー氏の小説を
現代の日本風にアレンジして作られています。
(連載していたのが2007~2011年なのでそれでも少し昔になりますが)
この作品ですが、僕は読んでいて「物語に引き込む力が強い」と感じました。
僕は2巻を最初に読んだんですが、あとはそのまま最終巻まで独走状態でした。
特に弥勒が計画を実行するまでの描写である1~2巻までの描写が丁寧で
人を殺すまでの緊迫感に飲まれましたね。
主人公の弥勒は厨二病の子供がそのまま大きくなったような性格をしていて、
自分の意志がしっかりしているように見えて自分の世界観だけで完結しているので
大それた事を言っているようで行動に説得力が欠けるというのは面白かったです。
(自身も自覚してたが実際の計画内容は穴だらけだった)
ただ、物事を斜に構えた鬱屈した彼の考えに同調出来るかで
物語への没入感は変わってくると思います。
正直1巻が終わった時点で彼の心理がわからない場合は
読んでもあまり楽しめないと思います。
また、本作は弥勒が罪を犯し罰と「取り戻す」までの流れを描いていますが、
登場人物こそ少ないですがそれぞれの過去話と心理描写に長くページが費やされるので
弥勒が殺人を犯した後は中だるみを感じる事もあると思います。
また、物語の都合上仕方ないんですが、
ミロクの心境の変化が早く訪れたように感じたのも気になりました。
ただ、全10巻のボリュームを考えると全体的にあまり気にならないと思います。
よく「10巻以内で何か面白いものはないか」というテーマで
スレがあがっているのを見かけますが、僕は今作を推したいですね。
絵は癖があると感じる人もいるでしょうが崩れもなく読みやすいので
安定してオススメ出来る作品と思います。
僕はこういう鬱屈した内容の作品が好きな人なので
これまで読んできた作品の中でもかなり上位に食い込む作品ですね。
こういう作品ばかり読んでるから
こんな凝り固まったメンドクサイ人間になったんじゃないかと
最近自分で思います・・・w
個人的にオススメシーンは弥勒が計画を実行するシーンですが、
五位検事とのやり取りが非常に印象に残りました。
弥勒の性格と行動が全て彼の言葉に裏打ちされていて非常に説得力がありました。