誰でも彼のようになる可能性がある。
鬱屈した日常を続けると人間は壊れる可能性があるという事を示唆している作品です。
悪や害を成すモノは排除するべきという
一見すると正しいようにも見える主人公の考えが
どの方向に向かうのかが見所となっています。
僕もそうですけど、
彼のように世の中を感じて日々を送っている人間は多いのではないでしょうか。
一応彼はやり方に問題はあれども
人とのコミュニケーションを形成しようと一定の努力はしているので
その点でも同情を誘うようには出来ています。
ただ、最初の映画館スタッフに対するアプローチからそうなんですが、
彼は女性への配慮というか対応が下手くそ&強引なので
僕は見ていてそこに対しての同情は全く出来なかったです。
物語としてはそこがキモというか彼の行動原理となっているので
そこに理解を示せないと全編通してちょっとしんどいと思います。
つーか、意中の女性との初デートにポルノ映画はアホ過ぎるわw
また、彼は憎むべき性欲に溺れる若者の一人を救おうと行動するのですが、
そもそも彼はそういった人間を嫌悪しているので
たまたま乗り合わせた客を救う為だけに全てを投げ出して行動するというのは
ちょっと弱い印象を受けました。(あれが男性客だったら同じ行動を取るのか等)
これは、彼とアイリスとの間に何かしらの絆があれば良かったんですけど、
彼と彼女は体を交わせてもいないし、
それどころか一般的な正論を振りかざして彼女に呆れられるくらいだったので、
彼の一方的な正義感であそこまで強行するのであれば
アイリスよりもベッツィに対して何かしらのアクション(報復)をしていた方が
まだ納得出来ました。
ここのアンバランス感は見ていて面白かったんですが、
このシーン、大統領候補暗殺計画と同時進行で進むんですけど、
暗殺計画が失敗したからこっちを実行したとも見えて
少々行動が軽く見えてしまったのは残念でした。
とはいえクライマックスシーンの彼の行動はかなり見応えがあったので
そこで一連の流れに対して納得は出来ました。
ただ、本作ラストのシーンは個人的には少々疑問で、
彼が英雄扱いになっても結局つつましくタクシー業を続けているというのは
少々後味が悪く感じつつも、
どんな事があっても人間は自分の人生を続けていくしかないという
どうしようもない不条理感を感じ取れて良かったんですけど、
そもそも彼が普通に生還してこれまで通りの生活を続けているという事自体には
ご都合主義を感じずにはいられませんでした。
最後のベッツィに対しての対応なんかは良かったですが、
あそこまでのアクションを実行しているのであれば
死んでいるか監獄エンドのような、
人生の歯車の噛み合わせなんかを訴える終わり方にした方がまだ納得出来ました。
まとめます。
映画なので作品にエンタメを求めてしまうような方には
本作はあまりオススメ出来ないと思います。
とはいえ、主人公のどうしようもない人生観や当時の腐敗した夜の街等
主人公に感情移入出来るように丁寧に作られていて、
見た後の衝撃度や訴えかけるメッセージ性なんかは随一です。
特に、本作は主人公が何をやっても裏目に出て
人生が上手くいっていない為に彼に同情しやすく、
ロバート・デ・ニーロの静かに壊れていく演技も相まって名作となっています。
当然世間からするとどんな理由があろうとも殺すという行為は正当される事ではない。
ただ、彼のような行動を現実に実行する人間が今の世の中にも数多く存在する。
そんな人間心理を1976年に作品化しているというのが
色々な意味で印象的な作品でした。
ただ、この作品。
今となっては誰向けにオススメ出来るか少々疑問ですw
リア充に対しては甘ったれんなと一蹴されそうですし、
主人公のような考えを持っている人にはある意味でトドメを刺してしまいそうだしで、
おいそれとオススメ出来る作品ではないような気がしますw
シンプルに、現実と空想を切り離せる今の人生に前向きな人に一番ダメージが少なく
視聴を勧められるカモしれません・・・w
個人的オススメシーンはやはりクライマックス~ラストシーンでしょうか。
衝撃度や余韻なんかがしっかり心に残りました。
ただ、大統領のSPに探り探り話を仕掛けるシーンが何故か印象的でしたねw